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【連載】 国際問題と日本の選択
拓殖大学特任教授/安全保障スペシャリスト  森本 敏

もりもと・さとし
1941年生まれ。防衛大学校卒。防衛庁、外務省、野村総研主席研究員、拓殖大学海外事情研究所長兼同大学・大学院教授を経て現職。その間2012年6月より12月まで防衛大臣歴任。専門は安全保障、軍備管理、防衛問題、国際政治。近著に「武器輸出三原則はどうして見直されたのか」(海竜社)など多数。

北東アジアにおける主要国関係の変化~韓国の対中政策に変化をもたらした要因~韓国の対外政策修正―中・日・韓関係を主体に

2015年9月30日、中国の抗日戦勝記念式典に朴槿恵大統領が招待されるまでの中韓関係は極めて良好だった。習近平主席は、朴大統領を最も重要な来賓の一人として扱い軍事パレードにもプーチン大統領に次ぐ2位の席順で処遇した。北朝鮮代表の崔竜海書記は最前列とはいえ右端の席であった。1954年10月の中国建国5周年記念軍事パレードで金日成主席が毛沢東主席の右隣であったのと比べると大きな違いである。しかし、この頃、既に韓国では韓国の対中輸出が伸び悩み、中国との経済関係に依存して韓国は発展するのかという声が上がっていた。

朴大統領は2014年10月に訪米し、16日の米韓首脳会談後の記者会見において在韓米軍のTHAAD配備に関して、米韓間でいかなる協議も行っていないと強調していた。南シナ海問題についても、韓国は日米の立場と一線を画し、関係国間の解決を呼びかけることにとどまった。こうした中国に配慮した韓国の対応や停滞した日韓関係に関する不満を米国は強く指摘し、朴大統領の訪米は韓国が期待したような成果を得ることはできなかったと言われている。

韓国の対外政策の変化が出てきたのはそれ以後である。10月20日には3年ぶりの日韓防衛大臣会合や10月30日の日中韓経済貿易担当大臣会合が行われた。更に10月21日には谷内NSC局長が訪韓して日韓首脳会談の下準備を整えた結果、11月1~2日には、約3年ぶりの日中韓首脳会議が行われた。その際、初めての朴大統領・安倍総理による公式の日韓首脳会談において、主として慰安婦問題について早期妥結に向けた話し合いが行われ、これを具体的に進めるために、11月11日、12月15日に日韓外務省局長級協議が行われ、12月28日には日韓外相会談が行われて慰安婦問題に関する基本合意が出来上がった。

この間、12月17日にはソウル地方法院が産経新聞ソウル前支局長に無罪判決を言い渡し、12月23日には憲法裁判所が、元徴用工の遺族が請求していた違憲審査申請を棄却するなど、関係改善に向けた環境も出来た。このように米韓首脳会談以降、明らかに日韓関係を元に戻す傾向が韓国側にみられた。この対外政策の変更は米韓首脳会談以降に、検討されたものと思われ、その後年末の日韓外相会談に向けて方向変換が行われていったと言うべきであろう。

米韓関係において、特にTHAAD配備問題については2014年5月19日にフランク・ローズ国務次官補が米韓研究所(ワシントンD.C.)で演説し、「米国は、北朝鮮におけるTHAADの恒久的設置を検討している。米国は、最終判断はしておらず、THAAD配備について韓国と公式に議論していない」と述べていた。

この問題が表面化したのは、スカパロッテイ在米韓米軍司令官が2014年6月にTHAAD配備について言及したことによるが、その後、ワーク国防副長官も同年9月に米国はTHAADの韓国導入を考慮していると発言している。中国は、当初からTHAADの朝鮮半島配備に慎重な姿勢を示していたこともあり、米韓両国とも10月16日の朴大統領訪米時の首脳会談や、11月2日のSCM(米韓安保協議・カーター国防長官訪韓)においても、THAAD配備については議題としておらず、協議も行われていないと説明してきた。

中国が朝鮮半島へのTHAAD配備に反対する理由は十分、説明されているわけではないが、THAAD配備に伴い配備される警戒監視レーダーが中国内を監視できることへの強い警戒心があると想像される。中国は米国に対してもこの点で懸念を表明している(2016年2月12日、中国の王外相がケリー国務長官に表明)。

しかし、この時期まで韓国は南シナ海問題でも米国の立場から一線を置いた対応に終始し、関係国による解決が望ましいという対応に終始していた。

北朝鮮の核・ミサイル実験に伴う韓国の変化

状況が一変したのは、2016年1月6日の、北朝鮮による4回目の核実験後である。このとき、韓国国防相が中国側とホットラインでコンタクトを取ろうとしたが、中国側は応じず、朴大統領と習近平主席の電話会談もできなかった。中国の方が、韓国の変化に対する不快感をこのような形で示した可能性はある。

朴大統領は1月13日、北朝鮮の核実験に関する国民向け談話後の記者会見で、初めてTHAADの韓国配備を巡り、韓国の国益と安全保障の観点から検討していくと述べた。正式協議や交渉にも入っていない段階での、この立場表明には注目される。

その後、韓国は日米と緊密に連携をとり、国連安保理における対北朝鮮制裁決議のために外交努力を始めた。ところが、その後、2月7日には北朝鮮が韓国の反対を無視して弾道ミサイル発射を行い、同日、朴政権はTHAADの在韓米軍配備に向けた協議を米国と開始する旨を発表し、また、開城工業団地の全面操業中断を公表するなど、国内の犠牲を払いつつも、相当に強い対応措置を北朝鮮に対して取るようになった。

また、朴大統領は、2月16日の国会演説で、「北朝鮮の政権が、核開発では生存できず、体制崩壊を招くだけだと悟らせる」、「より強力で実効的な措置を取っていく」と表明し、北朝鮮は猛烈にこれに対して反発した。

国連安保理が約2カ月近くの期間をかけて主として米中交渉を行った結果、北朝鮮の核実験および弾道ミサイル発射に関する安保理決議が3月2日(現地時間)に採択された。この決議は、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発を放棄させるため、開発活動に使用されていた財源(ヒト・モノ・カネ)を断ち切ることを目標としており、

  • (1)資産凍結及び、投資・融資の全般規制
  • (2)関係外国人の追放・事務所の閉鎖
  • (3)食糧・医薬品を除き、軍の運用向上あるいは、核・ミサイル計画に関連する品目についての北朝鮮への輸出入禁止
  • (4)北朝鮮から石炭、鉄、鉄鉱石、金、チタン鉱石、バナジウム、レアアースの輸出・調達の禁止
  • (5)航空燃料の北朝鮮への販売・供給の禁止
  • (6)北朝鮮船舶の入港禁止、あるいは自国領海内での検査、船舶登録変更の禁止

などが含まれている。これで北朝鮮がどれくらい追い込まれるのか、その結果、5月の党大会を前に金正恩第一書記が国内における指導力を発揮するため、大規模な挑発活動で対抗してくるのか注目される。

一方、中国は最近(2月17日の豪外相との会談後の記者会見において)朝鮮半島の非核化を実現するための6カ国協議とは別に朝鮮半島の停戦・和平メカニズムへの転換を並行して推進する考え方を示している。後者は、北朝鮮が米国に対し、休戦協定交渉を2015年10月頃に提案した内容と類似している。このことは、6カ国協議に従来の核開発計画廃案だけでなく、平和協定締結に向けた努力をマンデートの中に加えることを意味しているかもしれず、6カ国協議(2008年の第6回以降中断)の再開を促すやり方として注目される。

いずれにしても北東アジアにおいて南シナ海や北朝鮮を巡る米国と中・ロの意見対立が続いており、韓国がようやく日米韓の緊密な連携に戻ってきたとはいえ、関係6カ国の確執はまだ続くと見るべきであろう。

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